検証結果
地上に設置された雨量計の観測値と比較することにより,XバンドMPレーダによる推定雨量の検証を行いました.
検証の方法
- 気象庁アメダス雨量計の観測結果を真値とし,レーダ推定による1時間積算雨量の回帰直線を求める.
- 解析は雨量計による1時間積算雨量が0〜10 mm,5〜15 mm,10〜20 mmといった10 mmの幅を持つ区間毎に行う.
- 解析事例は2007年から2009年の暖候期の27事例(雨量計で1時間に5 mm以上の降雨が観測され,レーダが正常稼働していることを基準に抽出).
- レーダから40 km以内の距離にある雨量計のみを使用.
検証結果
上の図は雨量計で観測された1時間積算雨量(横軸)と,レーダで指定した1時間積算雨量( 縦軸)の散布図を示しています.水色の背景で示される領域はレーダ推定雨量が過小評価している領域で,黄色の背景で示される領域は過大評価を示します.左の図のレーダ推定雨量は防災科研のXバンドMPレーダを使用したもので,右の図は気象庁のCバンドレーダを用いたものです.この解析では青の水平線で示す区間(雨量計積算雨量の区間幅10 mm)毎に線形回帰を行っており,丸印はその区間内における雨量計およびレーダ推定雨量の平均値を示しています.丸印に鵜属するエラーバーは区間毎の線形回帰直線とレーダ推定雨量の差の二乗平均平方根の2倍を示しています(つまり,推定結果のばらつき具合を表しています).
丸印の分布を見ると,XバンドMPレーダの方が1対1の直線(水色と黄色の背景の境界)に近い位置に分布しており,ばらつき具合も小さいことがわかります.特に,在来型のCバンドレーダでは1時間積算雨量が大きくなるにつれてばらつき具合も大きくなっていますが,XバンドMPレーダではそのような様子が見られません.
まとめ
- XバンドMPレーダでは従来の手法よりも高精度でばらつきの少ない降雨強度推定が可能.
- 特に,強い雨ほど従来手法よりもばらつきが小さくなる傾向があります.