防災科研XバンドMPレーダの紹介
防災科研に最初の気象レーダが導入されたのは1969年です.研究所の設立が1963年であることを考えれば早くから気象レーダを導入して研究をおこなってきたと言えます.防災科研の気象レーダを用いた研究の歴史を見てみると,非ドップラーレーダ,ドップラーレーダ,MPレーダと進化してきました.このページでは防災科研のXバンドMPレーダを紹介します.
MPレーダシステム
MPレーダシステムは雲−降水過程を研究するために1996-1997年の技術調査,基本設計,詳細設計を経て2000年に完成しました.MPレーダシステムは,雲を観測するための2波長高感度レーダ(KaバンドおよびWバンド)と降水を観測するためのXバンドMPレーダから構成されています.XバンドMPレーダは当初,機動的な観測をおこなうために4トン車に搭載されていました.
海老名レーダ
2000年に完成したXバンドMPレーダは,雨の連続観測をおこなうため,2003年に神奈川県海老名市の4階建ての建物の屋上に固定されました.これにより,首都圏における豪雨の発生を常時、監視することが可能になりました.また,強風時にも安定的な観測を行うために,アンテナを覆うレドームも設置されました.2014年には固体素子を用いたパルス圧縮レーダーに置き換えられ,現在に至ります.
木更津レーダ
1988年に吹雪を観測するために製造されたXバンドドップラーレーダを2007年度にMPレーダへ改造し,千葉県木更津市の木更津市役所の屋上に設置させていただきました.その後,約1 km離れた海岸付近へ移設しました.
レーダの諸元
レーダ | 海老名レーダ | 木更津レーダ |
---|---|---|
送信周波数 | 9468.7 MHz/9471.2 MHz | 9700 MHz |
空中線 | パラボラ(φ2.0 m) | パラボラ(φ2.2 m) |
空中線利得 | 43.4 dBi | 44.4 dBi |
ビーム幅 | 1.15 ° | 1.0 ° |
マイクロ波増幅器 | 固体素子 | クライストロン |
送信出力(デューティー比) | 800 W(49.5 %) | 50 kW(0.8 %) |
パルス幅 | 1.0/32 usec | 0.5/1.0/2.0 usec |
パルス繰り返し周波数 | 1500 Hz以下 | 1800 Hz以下 |
偏波 | H/V同時送受信 | |
最大ドップラー速度(PRF 5:4) | 11.87 m/s(47.5 m/s) | 13.9 m/s(55.7 m/s) |
最小受信感度 | -114.6 dBm | -119 dBm |
観測半径 | 80 km以上 | |
観測パラメータ | REF, VEL, WIDTH, ZDR, PHIDP, RHOHV, KDP他 |